心電計物語 -熱き憶い出-

はじめに

  • ホルター心電計は「いつでも、どこでも」24時間の心電図のとれる簡便で確実な検査装置であります。不整脈・虚血性心疾患の診断には有効な検査法といえます。また、「患者さんと一緒に考え、一緒に納得し、一緒に治療し、その経過を見守る医療」を実現できる臨床医家にはなくてはならない検査法ともなっています。
    ここでは、そのホルター心電計を研究医の諸先生方のご指導の下に日本独自の発想で開発し、臨床応用ができるまでにもっていったホルター心電計の歩みを概述させて頂きたいと思います。
  • 野口亮造氏の写真
    フクダ電子(株)
    元特別顧問
    野口亮造

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開発事始め

アメリカのDr.ホルターによって、1957年(昭32)に心電信号テレメーターによる記録が発表され、1961年(昭36)には、テープレコーダーを用いた携行型長時間心電図記録、再生システムが発表されました。
Dr.ホルターの開発したカルヂオコーダーは3インチ・オープンリールを使用し、記録には2個のリールを必要としました。テープ保存には巻戻しを要しました。その後、アビオニクス社等が、このシステムを発展させ、大型コンピュ―ターを用いた高速自動解析方式のホルターを開発しています。ただ、このシステムはノイズによる影響が大きくて信頼性が乏しく、しかも、十分に有効な解析プログラムが準備されていないというような状況でした。我国でも、大学、基幹病院でのみ使用されましたが、1人のデータ解析に、専門医がモニターの前に張り付いて3-4時間かかりました。価格も2千万程の高価で、記録器も大きくて、重く、患者さんの負担は相当なものでした。
このような状況の中で、我国でも、1972年(昭47)、ホルターの原形となった国産初のテープ式簡易型携帯用心電計が開発されました。市販テープレコーダーを使用した記録1時間、記録再生1対1の機器でした。日常の生活行動を記録するための音声メモつきに特長がありました。(SFR-10)
1974年(昭49)には記録2時間、再生4倍、音声メモつきの機器が発表されています。(SFR-11)
テープレコーダーを心電図記録の特殊仕様で民生のメーカーに発注する場合、どうしても発注量が2桁も3桁も少なくて苦労したようです。医療機器の部品の発注量の問題は現在も同じですが、その中にあって、採算を度外視して、協力しくれた民生メーカーがあったればこそ医療機器の発展があったわけです。

  • 音声メモ付記録器 SM-10の写真
    音声メモ付記録器 SM-10
  • SFR-10の写真
    SFR-10

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24時間ホルターの開発

このような過程を経て、1977年(昭52)ついに、国産初の24時間ホルター心電計が完成しました。専用カセットレコーダーを使用、記録26時間、再生60倍の画期的なものでした。(本体SCM-240、記録器SM-24)ホルターに使用する電極も24時間に耐えうるものということでマグネットつきの特殊電極を開発しました。(マグネローデ電極)装着、脱着が容易、波形の安定性が良いディスポ電極といったホルターにピッタリの特長をもっています。国産初、24時間記録といっても、この機器は欧米の流れを汲むものであり、漸く、世界のレベルについていけるといった程度でした。臨床普及といった点でも、まだまだ価格が高く、手間もかかり過ぎて一部専門病院でのみ使用されているという状況でした。次に、開発された日本独自の発想によるSCM-270の出現によって、一挙に臨床応用が可能になり、診療所の先生方にも使用して頂けるようになってくるわけです。

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臨床応用への展開

1984年(昭59)フクダ電子は新発想のSCM-270を完成。このシステムは研究用ではなく、あくまで、効率的に臨床に使える日本独自のものを目指していました。
基本方針としては 再生機能と医師の判定を分ける。
再生処理はあくまで高速・全自動として、先生方の手間をかけない。
判定は先生方が都合のよい時間に一括判定できるように見易いデータを作成する。
1人3-4時間、専門医がかかりつけで判定しなければならない従来のシステムを払拭する狙いで開発されたものでありました。
そして、全波形の圧縮記録に瞬時心拍とSTレベルのトレンドグラムが共通の時間軸に記録されて、判定に必要なデータが見易く提供できるフォーマットが完成致しました。120倍速、24時間のデータをわずか12分で無人化で再生するシステムが実現したわけです。これには、永年、試行錯誤して、研究してきたホルターの周辺技術とME機器の記録装置として開発されてきたサーマル・レコーダーの技術が大きく寄与しています。
その後、開発が進展し、それまで記録が難しいとされてきたスーパーインポーズ波形(波形の重ね書き)を一定時間毎の波形の変化として記録することが可能になりました。これで、瞬時心拍で不整脈をスクリーニングして、右欄の全波形で確認。STトレンド、スーパーインポーズでSTの変化をみることができて、より精度の高い情報を、早く、簡便に得ることができるようになりました。1980年(昭55)の診療報酬改定でホルター検査は1500点に改正されました。
このように、簡便に有効な情報が得られるようになり、検査の有効性が認知されたホルター検査は一挙に臨床に応用されるようになりました。その意味では、SCM-270はホルターの流れを変えたエポックメーキングの機器であるといえます。

臨床化を進めた画期的フォーマットの写真
臨床化を進めた画期的フォーマット

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再生センターの普及

  • このように、再生に先生方の手間を要さない機器が開発されましたので、センターに再生器の本体を置き、記録されたカセットテープを送って頂いて再生してお返しするサービスが普及してきました。
    医師会や臨床検査センターが中心となって運営されています。必要に応じて、専門医のチェックも受けることもできるようなっています。診療所の先生方は高価な再生器は買われなくても、記録器だけ購入いただければホルター検査が、容易にできるようになりました。
    再生センター方式がホルター検査を臨床に普及させた大きな要因ですが、この方式を可能にしたのも、SCM-270の再生と判定を分けた機能によって実現できたものと思います。
  • SCM-270の写真
    SCM-270

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その後の進歩

  • ホルターの基本フォーマットはSCM-270で確立されましたが、その後、マイクロコンピュータの進歩と共に高速自動解析が導入されました。
    最近では高性能パソコンを使ってホルターの高性能化、多機能化、効率化が進んでいます。再生720倍、印刷スピードも高速化し、編集機能も充実して多種類のレポートを打ち出すようになっています。
    再生解析・編集・印刷が3人分同時にできるようになり、再生センターでの効率化も図られています。
    ネットワーク化による電子カルテや院内システムへの対応も準備されています。デジタル記録器も開発され、テープの代わりにICカードを使うようになっています。より小型、軽量化が実現し、繰り返し使用しても波形劣化がなく、高品質の波形が得られる特長を持っています。また、モーターが無いので、駆動音が聞こえず、24時間携帯する患者さんには優しい機器となっています。
    ICカードを利用したマイコン心電計による再生が可能になりました。ホルター心電計は、かなり手近かな検査法になってきたといえます。
    パラメーターのマルチ化も進展し、血圧、SPO2(動脈血酸素飽和度)、呼吸、体位、ペースメーカーパルス検出が24時間計測できる機能も開発されました。特に、血圧ホルターは血圧の日内変動が記録できるということで好評を頂いています。
    最近では、24時間のSPO2、呼吸機能の計測データ等を用いて睡眠時無呼吸症候群(SAS)のスクリーニング検査にも活用されるようになってきました。
  • 心電図血圧の24時間記録計 FM-200の写真
    心電図血圧の24時間記録計
    FM-200

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おわりに

  • 以上述べさせて頂きましたような過程を経て、日本のホルターの基礎が築かれてきたと思います。
    これらは、研究医の先生方の御指導の下に、技術者が永年にわたって必死の努力をして基礎技術を固めたことによります。
    民生技術の進歩による各種デバイスの活用。更には、欧米のマネではなく、日本独自に臨床応用のホルター機器をつくるといった明確な考え方に徹したことが成功の要因だったといえます。また、先生方に、よくお使い頂いて、いろんな意見をお聞かせいただいたことも、大変、参考になり、励みとなっています。
    「大いなる活用が大いなる進歩」を生むことになります。
    あらためて、感謝の意を表し、「ホルターの歩み」を終わらせて頂きたいと思います。
    「国産、MEメーカーのフクダ電子」今後とも、よろしく、お引き立てのほど、伏してお願い申しあげます。ご精読有り難うございました。
  • ホルター心電図検査+睡眠時無呼吸検査 デジタルホルター記録器 FM-500の写真
    ホルター心電図検査+睡眠時無呼吸検査
    デジタルホルター記録器
    FM-500
    超コンパクトデジタル(110g)デジタルホルター心電計 FM-120の写真
    超コンパクトデジタル(110g)デジタルホルター心電計
    FM-120

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主な参考文献

  1. MEのあゆみ「ホルター心電図システム」 佐藤忠一編著  (株)エム・イー・タイムス刊
  2. 医用電子と生体工学  日本ME学会雑誌
  3. 「創業への挑戦」福田孝著 (株)エム・イー・タイムス刊

※この記事は大阪府医師協同組合の「医師協タイムス」に「ホルター心電計のあゆみ」として掲載されたものです。(一部加筆)

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