AED(自動体外式除細動器)は、突然の心停止など命に関わる場面で大きな役割を果たす医療機器です。しかし、導入には数十万円以上の費用がかかることから、設置をためらうケースも少なくありません。こうした背景を受けて、各自治体や団体ではAED設置に対する補助金・助成金制度を設け、導入を支援しています。
当記事では、AED設置に関する補助制度の種類や対象、申請条件、実際の事例を分かりやすく解説します。AED補助金・助成金を利用して設置費用が負担軽減できるかもしれません。ぜひ参考にしてください。
1. AED設置に対する補助金・助成金はある?
AEDの設置に関する購入・レンタル費用については、地方自治体や民間団体が補助を行っている場合があります。補助内容や条件は地域によって異なり、年度ごとに変動することもあるため、設置前に制度の有無や対象条件を調べておくことが重要です。
ここからは、AED設置に対する補助金・助成金の種類や対象、申請条件などを紹介します。
1-1. 補助金・助成金の種類
AED設置に関する補助金・助成金には、大きく分けて2種類あります。1つは市区町村などの地方自治体が設ける公的制度で、もう1つは民間の事業財団などが実施している助成制度です。自治体の制度はエリアによって異なり、東京都大田区のように購入費用や消耗品交換費用の一部を補助するケースがあります。
一方、自治体以外の民間団体による助成制度としては、「日本スポーツ振興センター」「自治総合センター」「あんしん財団」などが代表例で、それぞれ支援対象や条件が異なります。AED導入を検討する際は、制度をうまく活用することで導入コストを大幅に軽減できます。
1-2. 補助金・助成金の対象
AEDの設置に関する補助金・助成金は、原則として個人ではなく、団体や法人を対象としています。代表的な対象には、自治会・町内会・自主防災組織・消防団・保育園・幼稚園・商店街・中小企業・私立学校・スポーツ団体などがあります。
自治体によっては、24時間利用可能な状態で設置されるAED収納ボックスに対しても補助対象とする場合があり、電源タイプ・電源不要タイプを含め、設置環境に応じた選択が可能です。
また、消費税の申告義務の有無によって補助額が異なることもあるため、注意が必要です。民間財団による助成金の場合は、それぞれの活動方針に沿った団体が対象となり、「日本スポーツ振興センター」ではスポーツ団体、「あんしん財団」では中小企業が主な支援先となります。
1-3. 補助金・助成金の申請条件
AEDの補助金・助成金を申請する際には、自治体ごとに異なる条件を満たす必要があります。
たとえば堺市では、補助事業の内容を変更・中止する際は承認が必要であり、また補助事業が予定通りに進行しない場合は速やかに報告しなければなりません。
出典:堺市「堺市AED(自動体外式除細動器)設置等補助金交付要綱」
一方、兵庫県播磨町では、薬事法の承認を得たAED本体と、成人用・小児用両方の電極パッドを購入することが条件とされています。また、AED設置場所を明示し、地域と連携して広く活用できるように努める姿勢も求められています。
多くの自治体では、条件が1つだけでなく複数設定されており、すべて満たすことが求められるのが一般的です。いずれかの条件を満たしていない場合、補助や助成の対象外となる可能性があるため、事前に詳細をよく確認しましょう。
1-4. 補助金・助成金の金額
AEDの設置にかかる費用を軽減できる補助金や助成金ですが、その支給額は自治体や団体によって大きく異なります。
たとえば大阪府堺市では、AED1台あたりの設置にかかる初期費用および撤去費用の2分の1が補助対象となっており、1件あたり約15万円が上限とされています。
出典:堺市「堺市AED(自動体外式除細動器)設置等補助金交付要綱」
補助金の金額や割合、上限額は地域ごとに異なるため、申請を検討している場合は、必ず自治体や実施団体の最新情報を確認することが大切です。
2. AED設置に対する補助金・助成金の事例
ここでは、実際にAEDの設置に対して補助金・助成金制度を導入している自治体や団体の事例を紹介します。
対象や金額、申請条件は地域や団体によって異なり、制度の運用状況も年度によって変更されることがあります。最新の制度内容や受付状況については、必ず各自治体・団体の公式サイトなどでご確認ください。
2-1. 東京都大田区
東京都大田区では、民間団体などがAEDを購入し、24時間誰でも使用できる状態で区内施設に設置する場合、補助金を支給しています。
補助金の主な対象は下記の通りです。
- AED本体の購入(リース不可)
- バッテリーパック(設置後5年まで)
- 電極パッド(2組まで)
補助金額は下記の通りです。
対象団体 | 初期費用 | バッテリーパック | 電極パッド |
---|---|---|---|
消費税申告義務ありの団体 | 消費税を除いた費用の2分の1 (上限32万3千円) |
消費税を除いた費用の2分の1 上限2万円 |
消費税を除いた費用の2分の1 上限1万円 |
消費税申告義務なしの団体 | 消費税を含めた費用の2分の1 (上限35万6千円) |
消費税を含めた費用の2分の1 上限2万円 |
消費税を含めた費用の2分の1 上限1万円 |
補助要件の一例は下記の通りです。
- 屋外設置が原則(例外あり)
- AED講習修了者が所属していること
- 5年間の設置継続
- 毎日点検を実施 など
2-2. 神奈川県大和市
神奈川県大和市では、個人が自宅にAEDを設置する場合でも、助成が受けられる制度を実施しています。
補助金の主な対象者は下記の通りです。
- 市内に1年以上住民登録がある世帯
- 単身世帯でないこと(例外あり)
- 世帯全員に市税等の滞納がないこと
- 最も所得の多い人の住民税所得割額が46万円未満であること
- 救命講習会を受講済みであること
- 市が認めるAED(非医療従事者向け)を令和2年4月1日以降に購入
補助金額は下記の通りです。
助成額 | 端数処理 |
---|---|
(上記のうち低い方の金額が支給される) |
助成額に1円未満の端数がある場合は切り捨て |
補助金は、1世帯につき1回かつ1個分に限るものと定められています。
2-3. 滋賀県草津市
滋賀県草津市では、地域の防災力向上を目的に、自主防災組織に対して「自主防災組織事業補助金」を交付しています。AEDも補助対象備品の1つに含まれます。
補助金の対象は下記の通りです。
- 草津市に登録された町内会・マンション管理組合等の団体
- AED本体(リース・バッテリー・電極パッド等は対象外)
- 自主防災組織が購入する防災用備品(発電機、担架、無線機など)
補助金額は下記の通りです。
補助対象 | 補助率 | 上限額 |
---|---|---|
AED含む防災備品 | 2分の1 | 20万円 |
2024年度~2028年度に限り補助額を強化しており、事前申請が必要です。
2-4. 兵庫県播磨町
兵庫県播磨町では、自治会が所有する公民館などにAEDを設置する際、費用の一部を補助する制度を設けています。地域の安全を高める取り組みとして活用されています。
補助金の対象は下記の通りです。
- AED本体と付属品(小児用電極パッド含む)の購入費
- AEDの設置工事費(初回設置時のみ)
- 自治会が所有する公民館などへの設置
補助金額は下記の通りです。
補助対象 | 補助率 | 上限額 |
---|---|---|
AED設置費用(付属品含む) | 10分の8 | 24万円 |
講習会受講、AEDの設置表示、地域への周知などの条件があり、事前申請と書類提出が必須です。
2-5. あんしん財団
あんしん財団では、職場環境を整えるための9つの補助制度を用意しています。その1つ「AED等職場の救急対策用設備の設置に対する補助金」では、従業員の急病時に備えて、AEDを購入した場合に費用の一部が補助されます。
補助金の対象は、以下の通りです。
- AED(非医療従事者向けで薬事法の承認を受けたもの)
- 設置場所が事業所(事務所・営業所・工場など)であること
- AEDは購入が原則(5年以上のリース契約も可)
補助金額は下記の通りです。
補助対象 | 補助率 | 補助条件 |
---|---|---|
AED等救急設備の設置 | 費用の2分の1 | 総額3千円以上であること |
まとめ
AEDの設置に対する補助金や助成金は、地方自治体や民間団体によって実施されており、支給対象や条件、金額は地域ごとに異なります。申請には設置前の手続きや講習会の受講、点検体制の整備などが求められることが多く、事前確認が不可欠です。また、補助対象にはAED本体だけでなく、消耗品や収納ボックスが含まれるケースもあります。
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