トピックス
AEDコラム
2025.09.29

AEDを使ってはいけない場合はある?適応外となる心停止も解説

突然の心停止が起きたとき、AEDは救命に欠かせない医療機器です。しかし、心臓の状態や周囲の環境によっては、電気ショックの実行指示が出ない場合があります。また、倒れている人の身体が水に濡れている状況や可燃性ガスのある場所など、使用を避けるべき場面も存在します。

当記事では、AEDが使える場合、使えない場合の心停止の特徴、また心停止か判断できない場合の対応や使用を避けるべき状況を解説します。いざというときに迷わず行動できるよう知識をつけておきましょう。

1. AEDが適応外になる心停止

AED(自動体外式除細動器)は心室細動や無脈性心室頻拍といった不整脈に対して有効ですが、すべての心停止に適応できるわけではありません。AEDが適応外となる心停止には「心静止」と「無脈性電気活動(PEA)」があり、電気ショックでは効果が期待できないため、ショック不要と判断されます。ここでは、それぞれの特徴と理由について解説します。

1-1. 心静止

心静止(asystole)とは、心臓の電気的活動が完全に停止している状態を指し、心電図では波形が一直線に描かれるのが特徴です。本来、心臓は洞房結節からの刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わり収縮しますが、この電気的活動そのものが途絶えるため、心筋は収縮できず血液を全身に送り出せません。ドラマなどで心電図が横線一本になるシーンがまさに心静止の状態です。

心静止では電気的活動が認められないため、除細動の効果は期待できないと言われています。そのため心静止はAEDの適応外となり、心肺蘇生法(CPR)や薬物投与など別の対応が必要となります。

出典:ソージュ山下町内科クリニック「心停止 その時心筋は・・」

1-2. 無脈性電気活動

無脈性電気活動(pulseless electrical activity:PEA)とは、心電図上には規則的または不規則な波形として電気的活動が確認できるにもかかわらず、脈拍を触知できない状態を指します。かつては「電動収縮解離(electromechanical dissociation:EMD)」と呼ばれていましたが、現在はより広い概念を含むPEAが用いられています。

代表的な原因としては循環血液量の減少、低酸素血症、心タンポナーデなどが挙げられます。PEAは心臓が全身に血液を送り出せない点で心停止の一種ですが、心室細動や無脈性心室頻拍のように異常な電気活動をリセットするわけではないため、AEDの電気ショックは効果を示しません。そのためAEDの適応外とされ、心肺蘇生(CPR)を継続しながら原因を迅速に特定し、可逆的要因を治療することが最も重要な対応となります。

出典:一般社団法人 日本救急医学会「無脈性電気活動(PEA) 」

2. AEDを適応できる心停止

電気的な異常が原因となっている心停止では、電気ショックによって心臓のリズムを正常に戻せる可能性があります。代表的な適応リズムは「心室細動(VF)」と「無脈性心室頻拍(VT)」の2つです。ここでは、それぞれの特徴とAEDが有効となる理由を解説します。

2-1. 心室細動(VF)

心室細動(Ventricular Fibrillation:VF)は、心臓の心室が規則正しく収縮せず、心筋の一部がバラバラに震えることで血液を全身に送り出せなくなった状態です。見た目にはけいれんのように動いているものの、実際には循環が途絶えており、脈は触れません。心室細動は心臓を動かす電気系統が混乱することで起こる重篤な不整脈であり、心臓突然死の主要な原因とされています。

血液が脳や臓器に届かなくなるため、数分で不可逆的な損傷に進行してしまう危険があります。このとき有効なのがAEDによる電気ショックです。電気的な刺激で心筋全体を一度リセットすることで、心臓のリズムを正常な状態に戻す可能性が期待できます。AEDが最も効果を発揮する代表的な心停止が、この心室細動です。

出典:公益財団法人 日本心臓財団「心室細動とはどんな不整脈ですか?」

2-2. 心室頻拍(無脈性心室頻拍・VT)

心室頻拍(Ventricular Tachycardia:VT)は、心室を発生源とする不整脈で、心拍数が毎分約120回以上と極端に速くなる状態です。通常は洞房結節から一定のリズムで電気刺激が伝わりますが、心室から異常な刺激が繰り返し起こると拍動が乱れ、持続すると「持続性心室頻拍」となります。特に無脈性心室頻拍(pulseless VT)では、心筋が一斉に動いていても速すぎるため「空打ち」となり、血液を全身に送り出せず脈を認知できません。

これは心停止の一種であり、倒れて意識を失い呼吸も停止します。AEDによる電気ショックは、この異常な電気活動をリセットし、正常な拍動を取り戻す可能性があるため有効です。心室細動と並び、AEDの適応となる代表的な心停止状態です。

出典:MSDマニュアル 家庭版「心室頻拍」

3. 見た目ではAEDが必要な心停止かどうかは分からない

倒れた人を見ただけでは、その心停止がAEDの適応となる心室細動や無脈性心室頻拍なのかを判断することはできません。道端では心電図を確認できないため、細かな判断に迷っている間に救命の機会を失ってしまう危険があります。もし相手に反応がなく、普段通りでない呼吸(喘ぐような呼吸やあごの動きなど)や呼吸停止が見られる場合は、ただちに心肺蘇生とAEDの使用を開始してください。

死戦期呼吸と呼ばれるしゃくりあげるような呼吸も心停止に含まれ、胸骨圧迫が必要です。心停止では約1分ごとに生存率が大きく下がるため、迷ったらすぐに胸骨圧迫とAEDを使用することが求められます。

3-1. AEDは自動的に電気ショックが必要か判断してくれる

AEDは、心停止が起きた人に対して電気ショックが必要かどうかを自動で判断してくれる機器です。心室細動など除細動が有効な場合には「ショックが必要です」と指示し、適応がない場合には「ショックは不要です」と案内します。

ただし、この「不要」という言葉は心臓が回復したことを意味するのではありません。実際には心静止や無脈性電気活動などショックの効果が期待できない心停止の場合であり、胸骨圧迫を継続することが不可欠です。救急要請をして指示を受けながら、迷わず心肺蘇生とAEDを用いることが重要です。

4. AEDの使用を避けたほうがよいその他の状況

AEDは心停止時の強力な救命手段ですが、状況によってはそのまま使用すると二次事故や適切な処置ができない危険性があります。ここでは、AEDの使用を避ける、または工夫が必要な代表的なケースを紹介します。

  • 周囲が危険な状態である場合
    AEDを使用する前に必ず周囲の安全を確認することが最優先です。可燃性ガスが漂っている場所では火花が引火する可能性があり、爆発や火災につながる危険があります。また、車の往来がある道路上や、感電の恐れがある水たまりの上なども危険です。まずは倒れている人を安全な場所へ移動し、自分や周囲の人の安全を確保してからAEDを使用しましょう。
  • 使用方法に則れない場合
    AEDは正しく装着・作動させることで効果を発揮しますが、その妨げになる状況があります。たとえば体が水で濡れていると通電が適切に行われず危険が伴うため、胸部の水分を拭き取ってから使用します。貼り薬を貼っている場合は火傷や爆発のリスクがあるため、通電を妨げるため除去し、体毛が濃い場合は電極パッドが肌に密着しにくいのでシェーバーなどで剃毛する必要があります。こうした下準備を怠ると、除細動の効果が得られない可能性があります。
  • AEDに異常や故障のマークが出ている場合
    AEDの多くはセルフチェック機能を備えており、異常があるとランプや画面に警告が表示されます。異常マークが点灯している場合、そのAEDは使用できません。その際には近くにある別のAEDを持ってきてもらうことが必要です。救命の現場では一刻を争うため、できる限り早く代替のAEDを確保し、胸骨圧迫を続けながら準備を進めましょう。

まとめ

AEDは心停止すべてに適応するわけではなく、心静止や無脈性電気活動では電気ショックが無効なため、胸骨圧迫や原因の治療が重要です。一方で、心室細動や無脈性心室頻拍といった不整脈には除細動が有効であり、AEDが自動的に判定して必要なら電気ショックを指示してくれます。

倒れた人を見ただけでは適応を判断できないため、意識がなく普段通りでない呼吸がある場合は迷わず心肺蘇生とAEDを開始しましょう。救命は時間との勝負であり、迅速に行動することが生存率を大きく左右します。

AEDの購入やレンタルを検討している方には、製品ラインナップが豊富なフクダ電子のAEDがおすすめです。用途や設置環境に応じた機種や関連商品が揃っており、導入後のサポートも整っています。詳しくはフクダ電子のAED製品情報ページをご覧ください。

AEDの購入・レンタルならフクダ電子

お電話でのお問い合わせ

営業時間 月〜金 9:00〜18:00
(祝祭日・休日除く)
~24時間電話対応~

フォームでのお問い合わせ・
お見積り
お近くの販売会社はこちら