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AEDコラム
2026.01.30

AEDの学校への設置基準とは?救命のためにするべき取り組みも解説

学校で突然の心停止が起きたとき、「AED(自動体外式除細動器)をどこから持ってくればいいのか」「自分が本当に使えるのか」と不安を抱える教職員は少なくありません。救命は1分1秒が生死を分けるため、迷わず行動できる環境づくりが重要とされています。しかし、現場ではAEDの配置場所が把握されていなかったり、研修の機会が限られていたりするなど、いざというときに十分に対応できない体制が課題となっています。

当記事では、学校におけるAEDの必要性やAEDの配置に関する法令、救命体制を整えるための実践的な取り組みを解説します。記事を読み進めることで、学校側で必要な体制づくりの全体像がつかめ、いざという瞬間に生徒の命を守る行動が取れるでしょう。

1.学校で心臓突然死が起きることはある

学校という日常の場でも、運動中などに心停止が発生する可能性は少なくありません。特に体育活動や部活動では突発的な異変が起こることがあり、そのとき周囲が適切に状況を見極め、早期に対応できる体制が重要になります。こうした救急救命の必要性が全国的に共有されるきっかけとなったのが、さいたま市で起きた小学校6年生の駅伝練習中の事故です。

教職員は心肺蘇生の講習を受けていたものの、「脈がある」「呼吸がある」と誤って判断し、死戦期呼吸を心停止と捉えられずAEDが使用されませんでした。この反省から、遺族と教育委員会が協力して作成したものが「体育活動時等における事故対応テキスト~ASUKAモデル~」です。事故分析をもとに、現場で判断が難しい場面を可視化し、判断行動チャートを作成しました。「反応や呼吸があるか分からない場合は、ためらわず119番通報とAED要請に進む」という行動指針を示しています。

さらに、市内の全公立学校では、年度当初に事例を想定した訓練を行い、教職員が役割分担や一連の流れを体験できる体制を構築しています。シミュレーション形式で行う訓練は、実際の場面での迅速な行動につながり、救命の連携を強化する取り組みとして継続されています。

出典:公益財団法人日本心臓財団「学校・スポーツ関係者の皆様へ」

出典:学校保健ポータルサイト「第2回「AEDが必要になった場合に備えて」」

2.AEDの学校への設置基準

学校は、児童・生徒だけでなく教職員や地域住民にも心停止が起こりうる場所であり、AEDの設置が求められる施設とされています。2018年の「学校における心肺蘇生とAEDに関する調査」では、AEDを1台のみ設置している学校が全体の約77.1%と最も多く、2台設置は約18.4%でした。多くの学校にAEDが備えられているものの、複数台の設置が必要と回答した学校は約68.1%に上り、1台だけでは十分に対応できないとの認識が広がっています。

また、設置場所は体育館や運動場ではなく、玄関・職員室・保健室に偏っており、校内の最も遠い地点までの往復が約5分以内と答えた学校は約70.4%にとどまり、約3割は約5分以上かかる状況でした。迅速な救命活動につなげるためには、リスクの高い場所を踏まえた配置や複数台の導入が求められます。

出典:一般財団法人日本救急医療財団 「AEDの適正配置に関するガイドライン」

出典:学校保健ポータルサイト「学校における心肺蘇生とAEDに関する調査報告書」

2-1.AEDの学校への配置に関する法令

学校にAEDを適切に配置し、着実に活用できる状態を整えることは法令でも明確に求められています。ここでは、学校が備えるべき仕組みを示す主要な規定を整理します。

・学校保健安全法(第26条)

学校設置者は、事故による危険を防ぎ、危険発生時に適切に対応できるよう、施設・設備・管理体制の整備に努めなければならないとされています。

・第2次学校安全の推進に関する計画(閣議決定)

非常時に使えるよう、AEDの定期点検、複数設置を含む配置場所の見直し、教職員の使用訓練を行う必要性が示されています。

・学校保健安全法(第29条)

危険時の対応手順をまとめたマニュアルを作成し、校長が職員への周知と訓練を行うことが求められています。AED使用を想定した訓練も含まれます。

・学校事故対応に関する指針(文部科学省)

マニュアルは毎年度見直し、実効性を高めることが求められています。

・学校保健安全法(第27条)

学校は心肺蘇生やAED使用を含む安全研修を計画・実施する必要があります。

・応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱(消防庁)

住民に対する普通救命講習は、約2~3年の間隔で定期的に再講習を行うことが推奨されています。

・AEDの適正配置に関するガイドライン

心停止リスクの高い場所の近く、現場から片道約1分以内、約24時間アクセス可能とするなど、設置場所の条件が示されています。

・AEDの適切な管理に関する文部科学省・厚生労働省の通知

点検担当者を配置し、インジケータランプの確認、電極パッドやバッテリ交換時期の管理、耐用期間の把握など、維持管理を徹底することが求められています。

出典:総務省「【学校における救命活動に関する調査ーAEDの使用を中心としてー】報道資料」

3.学校におけるあるべきAEDを使った救命活動の体制とは

学校管理下で心停止が起こった際に迅速な救命処置につなげるためには、AEDを使える体制を構築する必要があります。ここでは、学校の教職員・生徒・地域が連携し、AEDを適切に活用できる救命活動体制のポイントを整理します。

3-1.教職員が心停止が起きたときに素早く対応できる

心停止は数分で生存率が急低下するため、教職員がためらわず処置を開始できる状態が必須です。教職員は一次救命処置(BLS)やAEDの操作を実技で学び、緊急時の判断に慣れておくことが求められます。しかし、調査では21校中12校で「3年以内にAED研修を受けていない教職員」が確認され、ある学校では未受講者が約93.9%に達するなど、技能維持にばらつきが見られました。

また、119番通報を管理職の許可なく現場判断で行えるようにすることも重要です。消防庁統計では、一般市民による応急手当が生存率を約2倍に高めることが示されており、学校においても迅速な判断と行動が救命の鍵を握ります。

出典:文部科学省「心肺蘇生等の応急手当に係る取組の実施について(令和6年6月3日 6教参学第14号)」

出典:総務省「【学校における救命活動に関する調査ーAEDの使用を中心としてー】報道資料」

3-2.AEDがすぐに使える状態になっている

※本画像は、実際の学校に設置されたAEDの事例です。

AEDは「どこにあるか分からない」「電池が切れている」といった状態では救命に役立ちません。救命率を高めるには、誰もが迷わず取れる場所にAEDを設置し、常に正常に作動する状態を保つ必要があります。調査では、運動場から約300m離れて片道約1分以上かかる例や、日常点検が行われず電極パッドの期限切れが放置された例も確認されました。

AEDは片道約1分以内で到達・運搬できる配置が推奨されており、心停止リスクの高い体育館入口・運動場付近への配置も必要です。さらに、教職員や生徒に配置場所を周知し、故障・バッテリ切れを防ぐため、日常点検や耐用年数の管理を徹底することが大切です。

AEDを「設置して終わり」にせず、いざという時に確実に使える状態を維持することが重要です。
フクダ電子では、学校の規模や動線を踏まえたAED配置の検討に加え、導入後の点検・管理体制まで含めて、学校へのAED設置・運用をサポートしています。

出典:文部科学省「心肺蘇生等の応急手当に係る取組の実施について(令和6年6月3日 6教参学第14号)」

出典:総務省「【学校における救命活動に関する調査ーAEDの使用を中心としてー】報道資料」

3-3.生徒への救命活動教育に取り組んでいる

救命の担い手を増やしたい場合は、学校教育の一環として「倒れている人を見たらどう行動するか」を生徒に理解させることも有効です。調査では中学校・高校の約半数、小学校では7校中4校が救命教育を実施しており、そのうち3校は心肺蘇生の実技まで行っていました。

一方、年齢的な理解力や体力面から実技は困難とする学校も見られました。しかし、小学生でも「大声で助けを呼ぶ」「119番通報をする」「AEDを要請する」など、年齢に応じてできる行動があります。早期から救命行動を学ぶことで、将来の救命参加への抵抗感を減らす効果も期待されます。

出典:文部科学省「心肺蘇生等の応急手当に係る取組の実施について(令和6年6月3日 6教参学第14号)」

出典:総務省「【学校における救命活動に関する調査ーAEDの使用を中心としてー】報道資料」

3-4.地域の住民が学校のAEDを使用できる

心停止は学校外でも起こりうるため、夜間・休日を含め地域住民が利用できる環境を整えることが重要です。調査では、夜間は職員室が施錠されAEDが使えないケースがある一方、全小学校で屋外にAEDを設置して常時利用可能とする自治体の例も確認されました。

さらに、日本救急医療財団の「全国AEDマップ」に登録していない学校が19校中10校あり、5校は一部のみ登録という状況で、地域への周知に課題が残ると指摘されています。AEDを地域に開放し、その位置を正確に伝えることで、学校は「地域の救命拠点」としての役割を果たせるでしょう。

出典:文部科学省「心肺蘇生等の応急手当に係る取組の実施について(令和6年6月3日 6教参学第14号)」

出典:総務省「【学校における救命活動に関する調査ーAEDの使用を中心としてー】報道資料」

まとめ

学校でAEDを適切に使い救命率を高めるには、教職員だけでなく児童・生徒や地域とも連携し、迷わず行動できる体制を整えることが必要です。突然の心停止はいつどこで起こるか分からず、対応が約1分遅れるごとに救命率は低下するとされています。だからこそ、日頃からAEDの配置の最適化、周知、訓練の継続が不可欠です。

また、教育現場では安全管理マニュアルの整備や、消防庁が示す応急手当の普及啓発ガイドラインを踏まえた研修を重ねることで、いざというときの迷いを減らせます。まずは、学校内のAED配置やマニュアルが適切かを点検し、不安がある場合は講習会に参加することも一案です。フクダ電子では、胸骨圧迫とAEDの使い方を中心に学べる、AED講習会「F'session」を実施しています。

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