「開業時に、どの加算を算定できるように準備すればよいのだろうか」
「自院の診療方針に合った施設基準が分からない」
「開業直前になって、必要な届出や院内体制の不足に気づいた」
クリニック開業を検討されている先生から、このようなご相談をいただくことがあります。
診療報酬の算定は、診療内容だけが評価の対象ではありません。加算には算定要件があり、施設基準の人員配置や設備、院内体制などは、開業前に整備しておく必要があり、開業直前になってからでは対応が難しい場合があります。そのため診療方針や設備計画を立案する開業準備の段階から、診療報酬の加算項目も合わせて検討しておくことが重要となります。
本シリーズでは、開業時に確認しておきたい診療報酬上の主な加算について、「基本診療料」と「特掲診療料」に分けて解説します。今回は基本診療料のうち、「医療DX」「かかりつけ医機能」「感染対策」に関連する加算と施設基準を紹介します。
基本診療料と施設基準の関係
診療報酬は、大きく「基本診療料」と「特掲診療料」に分けられます。
診療報酬の構成
基本診療料
初診料・再診料、入院基本料など、診療を行ううえで基本となる部分を評価するもの。初診料・再診料などには、さまざまな加算が設けられている
特掲診療料
検査、処置、手術など、個別の診療行為や特定のサービスを評価するもの
●施設基準とは
施設基準とは、診療報酬を算定するために、医療機関が満たす必要のある人員配置や設備、運営体制などの要件を指します。
算定要件に施設基準が設けられている項目では、対象となる診療行為を行うだけでなく、地方厚生(支)局へ届出を行う必要があるものがあります。
※施設基準の届出手続きは先生ご自身が行うほか、行政書士に依頼することも可能です。
基本診療料に関する主な施設基準の届出割合
基本診療料の施設基準は、加算項目によって届出状況に大きな差があります。下記のグラフは一例として、関東信越厚生局管内の医療機関における、主な基本診療料関連の施設基準について、届出を行っている医療機関の割合を比較したものです。
主な基本診療料関連の施設基準の届出割合
※本グラフの数値は厚生局公表資料を基に独自集計したものです。参考値としてご参照ください。
届出状況の違いには、必要な設備や人員体制、日常的な運用負担、診療報酬の点数など、さまざまな要因が関係していると考えられます。開業準備では自院の診療方針に合わせて、どの加算を算定するのかを整理しておくことが重要です。
医療DXに関わる基本診療料の加算・施設基準
医療DXの推進に伴い、診療報酬においても、電子的な情報活用や医療機関間の情報連携を評価する仕組みが整備されています。
ここでは、医療DXに関連する基本診療料の加算である「電子的診療情報連携体制整備加算」と、オンライン診療に関わる施設基準である「情報通信機器を用いた診療に係る基準」を取り上げます。
電子的診療情報連携体制整備加算の概要
令和8年度診療報酬改定では、「医療DX推進体制整備加算」および「医療情報取得加算」が廃止され、これらに代わる新たな評価として「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されました。
電子的診療情報連携体制整備加算は、オンライン資格確認やマイナ保険証への対応に加え、取得した情報を診療に活用し、医療機関間の連携を推進することで、質の高い医療の提供につなげる体制を評価するものです。
電子的診療情報連携体制整備加算の主な施設基準は次の通りです。
電子的診療情報連携体制整備加算の施設基準
(1)オンライン請求を行っていること
(2)診療報酬明細書を患者に無償で交付していること
(3)オンライン資格確認を行う体制を有していること
(4)医師または歯科医師が、オンライン資格確認等システムを利用して取得した診療情報を、診療を行う診察室、手術室または処置室等において、閲覧または活用できる体制を有していること
(5)マイナ保険証利用率が30%以上であること
(6)マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有していること
(7)明細書発行に関する事項、医療DX推進の体制に関する事項等について、当該保険医療機関の見やすい場所およびウェブサイトに掲載していること
(8)電子処方箋を発行する体制または調剤した薬剤に関する情報を電子処方箋システムに登録する体制を有していること
(9)以下のアからウのすべてまたはエを満たす電子カルテを有していること
ア 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制であること
イ 電子処方箋管理サービスとの接続インターフェースを有していること
ウ 電子カルテ情報共有サービスとの接続インターフェースを有していること
エ 厚生労働省が認証する電子カルテ製品であること
(10)アを満たすまたはイおよびウを満たすこと
ア 国等が提供する電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制を有していること
イ 地域の複数の医療機関間で検査結果や画像情報等を含む診療情報を共有または閲覧できるネットワークであって、以下の(イ)から(ハ)のすべてを満たすものを活用する体制を有していること
(イ)当該ネットワークに参加している保険医療機関の数が10以上であり、そのうち診療情報を開示している病院の数が2以上であること
(ロ)登録患者数が1,000人以上であることまたは新規登録患者数が年間100人以上であること
(ハ)当該ネットワークの運営主体が連携している医療機関名および登録患者数をウェブサイトで公表していること
ウ 以下の(イ)および(ロ)を満たすこと
(イ)診療情報提供料(Ⅰ)の検査・画像情報提供加算または電子的診療情報評価料の施設基準を届け出ていること
(ロ)当該ネットワークに参加していることおよび実際に患者の情報を共有している実績のある保険医療機関の名称について、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf(2026年10月2日閲覧)
電子的診療情報連携体制整備加算は、体制整備の状況に応じて3つの区分が設けられており、加算3から加算2、加算1と上位の区分になるにつれて、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスなどに関する追加要件が加わります。
電子的診療情報連携体制整備加算の区分
| 区分 | 算定要件 | 初診時(月1回) | 再診時(月1回) |
|---|---|---|---|
| 加算1 | 基本要件の(1)〜(7)をすべて満たしたうえで、追加要件(8)〜(10)のすべてを満たす | 15点 | 2点 |
| 加算2 | 基本要件の(1)〜(7)をすべて満たしたうえで追加要件(8)〜(10)のうち、いずれか1つ以上を満たす | 9点 | |
| 加算3 | 基本要件(1)〜(7)をすべて満たす | 4点 |
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681336.pdf(2026年10月2日閲覧)
特に開業時に確認しておきたいのが、マイナ保険証利用率の要件です。ここでは、オンライン資格確認の体制整備だけでなく、原則算定月の3か月前のマイナ保険証利用率が30%以上であることが求められています。なお、3か月前の利用率に代えて、前月または前々月の利用率を用いることもできます。
新規開業の場合は利用実績がないため、自院の状況に応じて個別の確認が必要になる場合があります。また、開業後の利用状況についても継続的に確認しておくことが重要です。
情報通信機器を用いた診療に係る基準と施設基準
情報通信機器を用いた診療は、一般的に「オンライン診療」と呼ばれ、スマートフォンやパソコンなどを活用して、医師と患者さんが対面せずに診察や療養上の指導などを行うものです。
オンライン診療は患者さんの通院負担の軽減につながる一方、安全性や適切性を確保することが重要となります。必要に応じた対面診療への切り替えや緊急時対応の体制整備、患者さんへの情報提供など、オンライン診療の継続的な実施体制の整備が求められます。
情報通信機器を用いた診療に係る主な施設基準は次の通りです。
情報通信機器を用いた診療に係る主な施設基準
- オンライン診療を実施するための十分な体制を整備していること
- 必要に応じて対面診療に切り替えられる体制を有していること
- 対面診療が困難な場合に備え、他の医療機関と連携体制を構築していること
- オンライン診療指針の遵守に関するチェックリストをウェブサイトに掲示していること
- オンライン診療の初診では向精神薬を処方しない旨を掲示していること
- 医療広告ガイドラインを遵守していること
- 向精神薬を処方する場合、電子処方箋管理サービスの重複投薬等チェック機能を用いること
- 厚生労働省が定める「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を遵守していること
- 地方厚生(支)局長等に届け出ていること
オンライン診療における初診料・再診料
情報通信機器を用いた診療に係る基準は、電子的診療情報連携体制整備加算のような加算の施設基準ではなく、オンライン診療における初診料・再診料を算定するための施設基準です。
対面診療と、オンライン診療の診療報酬上の初診料・再診料は次の通りです。
オンライン診療の診療報酬上の取り扱い
| 区分 | 対面診療の場合 | 情報通信機器を用いた場合 |
|---|---|---|
| 初診料 | 291点 | 253点 |
| 再診料 | 76点 | |
情報通信機器を用いた診療による初診料は、対面診療より38点低く設定されています。
医療DXに関わる基本診療料・施設基準のまとめ
電子カルテやオンライン資格確認、オンライン診療などに関わるシステムや設備は、導入後の変更に一定の負担が伴います。そのため、将来的な診療スタイルや院内の業務フローを見据え、必要な機能やシステム間の連携、情報の活用方法まで開業準備の段階から検討しておくことが大切です。
次回は、地域の患者さんを継続的に支える「かかりつけ医機能」に関わる基本診療料について解説します。