AIで診断はどう変わるのか 【総合科学雑誌Nature掲載記事広告】
-
TOPICS

国際的な総合科学雑誌Natureに、記事広告「HOW AI COULD HELP DIAGNOSE A DEADLY HEART CONDITION」が掲載されました。
当ページの内容はNature(※1)(2026年7月2日発刊)に掲載された該当記事広告を日本語に翻訳したものです(日本語版文責:フクダ電子株式会社)。
心電計の発作性心房細動を予測するAI機能について紹介されています。ぜひ、ご覧ください。
※1 Natureは世界中の読者に最先端の科学を伝える国際的な総合科学雑誌です。
標準的な心電図(ECG)の結果を解析して心房細動の兆候を検出するAI機能が、日本の病院で導入されつつある。検出率の向上と人命救助への貢献が期待されている。
心電図(ECG)は、多くの心血管疾患の診断だけでなく、将来それらを発症するリスクを評価するためにも非常に有力なツールである。しかし、心房細動やその他いくつかの心血管疾患は症状が断続的にしか現れないため、10秒間の心電図記録だけでそのリスクを捉え、評価することは困難である。
一般的な不整脈の一つである心房細動は、日本では約100万人、世界では成人のおよそ3%が罹患している。心房細動は、心臓が突然かつ無秩序な興奮状態に入ることで発生する。
このような発作の間には、心臓が拍動を飛ばすことがあり、それによって血流が乱れる可能性がある。この血流の乱れにより血栓が形成され、それが主要な動脈へ移動して脳卒中を引き起こすことがある。
「心房細動は、脳卒中、心不全、そして早期死亡のリスクを高めます。」と、日本の東京科学大学の循環器内科医・不整脈専門医である笹野哲郎氏は語る。
心房細動は発作が散発的に起こるため、検出が難しい。「心房細動は、一過性、あるいは時には症状がまったく現れないこともあるため、診断が非常に難しい疾患として知られています。」と笹野氏は述べる。
ゲームチェンジャー
これは残念なことである。なぜなら、早期に発見できれば治療が可能だからである。「私たちは心房細動を効果的に治療する手段を持っています。」と笹野氏は続ける。「したがって、この疾患のリスクを正確に評価し、迅速に診断する方法を見つけることができれば、多くの患者さんにとってゲームチェンジャーとなるでしょう。」
現在、心房細動発作の証拠を捉える一般的な方法は、患者が1〜2週間心電図モニターを装着することである。しかし、それでも確定診断を逃してしまう可能性がある。
笹野氏は、長期間の心電図モニタリングを行っても、心房細動を捉えられるかどうかは運次第であると説明する。「大きな問題は、標準的な12誘導心電図だけでは、心房細動の有無を予測できないことです。」と彼は言う。「熟練した専門医であっても、心房細動が引き起こす非常に微細な電気的・構造的変化は人の目には見えないため、心電図から心房細動の兆候を常に見つけられるとは限りません。」
しかし、AIはこの問題を解決する有望な方法を提供できる可能性がある、と彼は主張する。「まさにここでAIが真価を発揮します。十分に学習されたモデルであれば、わずか数秒間の心電図波形から、このような非常に微細で、人にはほとんど認識できない信号を学習して検出することができます。」
この課題に取り組むため、東京に本社を置く医療機器メーカーフクダ電子株式会社の研究者らは、国内の医療機関の医師らと共同で、1回10秒間の心電図検査だけから心房細動を診断、あるいは将来の心房細動発症リスクを予測できるAIモデルの研究・開発に取り組んだ。
この研究の成果として、日本で初めて承認されたAI搭載心電図システムが開発されたと笹野氏は述べる。特に重要なのは、このAI機能がアプリケーションとして提供されており、既存の心電計と完全な互換性を備えている点である。そのため、新たなハードウェアを追加したり、既存機器を高額な費用をかけて更新したり、複雑な操作トレーニングを実施したりする必要がない。¹
この技術は日本ではすでに使用が承認されているが、英国、欧州連合(EU)、米国などの地域では、現時点ではまだ承認されていない。

AIを用いて読み取り結果を解析する心電図装置
心電図(ECG)の力を活用する
研究チームは、既存の心電計に容易に組み込むことができるアプリケーションパッケージを開発した。このアプリケーションは、医師に対して迅速な診断結果とリスク評価を心電計の画面上に表示する。
このアプリの基盤となるAIモデルを構築するために、研究チームは、日本国内7施設の循環器病院に通院する40歳以上の外来患者2,930名の後ろ向き心電図データを収集した。これらの患者は全員、心血管疾患の既往歴を有していた。患者は、心房細動と診断されている群と、心房細動の診断歴がない対照群の2群に分類された。心房細動の有無は、循環器専門医の管理下で、臨床診断および心電図リズム記録によって確認された。なお、研究期間中、いずれの患者にも抗不整脈薬は投与されていなかった。
「AIモデルがさまざまな心電図パターンを読み取り、心房細動の兆候を見つけられるようにするためには、異なる患者集団から得られたデータが必要でした。」と笹野氏は説明する。
「対照群は特に重要でした。私たちは、この中に潜在的な心房細動患者が含まれていないかを確認したいと考え、その患者さんたちの心電図をAIモデルに解析させ、該当者を見つけ出すよう学習させました。」
最も性能の高かったAIモデルは、学習データセットにおいて心房細動症例の75%以上を正しく識別するという、堅牢かつ高精度な結果を示した。
「私たちのAIモデルは、標準的な洞調律心電図を約2秒で読み取り、解析し、心房細動のリスクを予測することができます。」と、フクダ電子株式会社でAIモデルの技術開発を主導した専門次長の呉弘敏(Hongmin Wu)氏は述べる。²「心血管疾患患者向けにAIモデルを最適化した後、日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)から承認を取得することができました。」
このアプリは2024年から日本国内の複数の病院の心電計に導入されている。
「導入施設の一部からは、このAIによるリスク評価によって、本来であれば見逃されていた心房細動が実際に診断されたという報告を受けています。」と呉氏は述べる。「長期間の心電図モニタリングが必要な高リスク患者を医師が優先的に選定できるようにすることで、私たちのシステムはAI支援型循環器診療の新しい時代における重要なツールとして機能します。」

フクダ電子の研究者たちが、被験者に心電図(右)を装着し、その読み取り結果(左)をAIで解析する方法を研究している様子。
より幅広い診断へのAI活用(AI FOR WIDER DIAGNOSTICS)
これまで、この技術の開発に研究チームが用いてきた学習データは日本人集団に基づくものに限られている。そのため、このアプリを世界の他地域へ展開し、日本国内でもさらに広く利用していくためには、他の人種・集団においても有効性を検証する必要があると研究者らは述べている。
「私たちは、このAIモデルを日本における健康な人々の年次健康診断にも活用できるようにしたいと考えています。」と笹野氏は語る。「しかし、そのためには健康な人々から得られた新たなデータが必要です。そこで私たちは、日本の静岡市の自治体と共同で前向きコホート研究を開始しました。この一般住民集団を対象として、私たちのAI搭載心電計を用い、10秒間の心電図検査を実施しています。」
臨床での有用性を高めるため、AIの出力結果は低リスク(Low)、中低リスク(Moderate Low)、中高リスク(Moderate High)、高リスク(High)の4つのリスク層別クラスに分類される。呉氏によれば、この4段階分類は、あらかじめ設定したカットオフ値を用いた尤度比(Likelihood Ratio)に基づくリスク層別化によって構築されている。
「心電図は、単に心拍リズムだけでなく、心臓の構造的情報および電気生理学的情報も捉えています。そのため、より幅広い診断ツールとして活用できる可能性があります。」と呉氏は述べる。「私たちは、これらの心電図信号に含まれる豊富な情報を活用することで、このモデルを単一疾患の診断にとどまらず、さらに幅広い疾患へ応用できることを期待しています。そのための最大の課題は、これらの信号の有効性を厳密に検証し、それを実際の臨床で活用可能な形へと結び付けることです。」
さらに笹野氏は次のように付け加える。「最終的には、AIを活用して臨床現場の業務負担を軽減し、患者中心の医療(Patient-centered Care)を支援したいと考えています。」「私たちのアプリは、日本全国の心電計へ低コストで容易に組み込むことができ、操作も理解も簡単です。数秒で明確なリスク評価を得られることは、心房細動の予防と治療にとって画期的な進歩となるでしょう。」
参考文献