FUKUDA BEAT
2026年6月8日
【役員インタビュー】
新棟の本格稼働で治療機器の生産を開始
自動化、内製化、システム化の推進で付加価値の高い製品製造と業務の効率化を実現

人の生命を預かる医療機器として高い品質を保証するために、フクダ電子白井事業所が掲げた「SHIROI QUALITY」。この言葉には、白井事業所の工場で働く社員一人ひとりが最高の業務品質を提供することで、高品質の医療機器を医療現場に届けるという強い決意が込められています。製品の内製化や治療機器の製造など、さまざまなモノづくり改革を推し進める生産本部長の神田豊晴は、「医療機器の製造においては全社員が自分事として考えることが大切」だと語ります。
目次
フクダ電子白井事業所が取り組む「人にやさしい製品づくり」
―― 白井事業所の位置づけ、現在力を入れている取り組みについて教えてください。
神田:白井事業所は、1973年にフクダ電子の国内生産拠点として建設されました。日々全国から入る医療機器の注文に対し、高品質の製品を適正なコストで、顧客が求める期日までに納品することが私たちの役割です。現在生産本部が注力して取り組んでいるのは、「自動化」「内製化」「システム化」の3つです。
自動化は主に作業者の熟練度や精度の必要な工程、ヒューマンエラーを防ぐことが重要な検査工程などで導入しています。製品に付加価値をつけるためには人の手、人の目が欠かせませんが、検査工程は協働ロボットによる自動化に向いています。従来の産業用ロボットは、安全性の観点から人と同じ空間で協働作業、協調作業を行うことが難しかったのですが、協働ロボットは人が側にいるときは安全な速度と力で動作し、人と接触した場合は安全に停止します。この協働ロボットにより製品(医療機器)や計測器を操作(手の代わり)し、画像処理装置によって自動判定(目の代わり)を行うことで高い品質保証につながります。
内製化については、心電計や酸素濃縮器といった主力製品のキーパーツからスタートし、自動体外式除細動器(AED)といった治療機器にも拡大しています。取引先に頼っていた部品を白井事業所で一から作ることによって、製品に高い付加価値を与えることができました。AEDの開発では、日本人の利用シーンに即した設計にこだわっています。高水準の品質保証と「ひとにやさしい製品づくり」が実を結び、顧客の評価が高まるにつれ、社内での内製化への期待も大きくなっています。
システム化では、主に管理部門のDX化を進めています。紙ベースの人手による管理体制から、電子データ化や見える化による効率化を図っていきたいと考えています。
―― 医療の最前線で使われる医療機器を生産するうえで重要なことは?
神田:重要なのは、社員一人ひとりが生産本部の仕事全体を「自分事」として考えることです。製品の不具合は会社にとって大きな損害となり得ますが、その原因の多くは各部署の業務と業務のすき間で発生したものです。人はどうしても「これがあなたの仕事です」と言われると、自分の仕事の範囲(輪の大きさ)を決めがちです。しかし、生産現場では、一部署の一工程が独立した輪で存在するわけでなく、つながってひとつの製品を生み出しています。自分の仕事の範囲はここまでと決めつけず、関連する部署の仕事にも目を配ってコミュニケーションを図るようにすれば、輪と輪の重なりが生まれてすき間のない面になります。これが不具合を防ぐうえで非常に重要な考え方だと思います。他部署、前工程、後工程も「自分事」とし、少し仕事の範囲を広げるだけで物事は好転するのです。
また、受け身にならず積極的に情報を取りに行くという意識を持って日々の業務にあたることが大切です。自らが動くことでアウトプットが180度変わることもあります。通常、新製品は開発から送られてくる図面をもとに製品を作りますが、コロナ禍に白井事業所主導で製品開発を行ったことがあります。これは急激な需要増加に応えるための社命でしたが、空気清浄除菌脱臭装置を約1年という短期間で開発し、発売までこぎつけたのです。社命を受けた当初、事業所内には「本当にできるのかな」という空気が漂っていましたが、「他人事、受け身ではいけない」「自分事で考えて能動的に動こう」とメッセージを伝えていくなかで、社員一人ひとりが自ら動き始めたのです。
白井事業所主導での製品開発は初めての試みとなりましたが、短期間での発売が実現したことで、需要に応えることができたたけでなく、社員一人ひとりにも自信が生まれました。この経験をしたことで、モノづくりに携わる者として一皮剥けたのではないかと感じています。

経営にも貢献するサステナブルな取り組み
―― 白井事業所でのサステナブル(持続可能)な取り組みの事例を教えてください。
神田:当社のサステナブルの取り組みのひとつに、酸素濃縮装置のオーバーホール作業があります。在宅酸素療法を受ける患者さんに向けて展開している酸素濃縮装置のレンタル事業では、製品を市場へ投入してから一定の周期でオーバーホールを行い、自社で決めた期間使用したら廃棄とする規定になっていました。しかし、酸素濃縮装置の部品はそれぞれ耐用年数が異なり、自社で決めた期間ですべての部品が使えなくなってしまうわけではありません。むしろその期間で廃棄することで資源を無駄にしていたものもありました。
コロナ禍に輸入品であったキーパーツの確保が難しくなったことで、酸素濃縮装置の生産には大きな影響がありました。この状況を打破したのがキーパーツの内製化と耐用年数に達していない部品のリユース規定の見直しでした。当然、品質を担保するためにリユース部品を使った装置も厳しい検査基準をクリアしていますが、部品によっては廃棄に至るまでの期間が従来の2倍となりました。この取り組みは、経営にも貢献することができました。
新棟の本格稼働で改革が進む白井事業所
―― 高水準の品質を維持しながら効率化を進めるためにどんな取り組みをしていますか?
神田:2025年5月本格稼働した白井事業所の新棟では、心電計、生体情報モニタ、血圧脈波検査装置、酸素濃縮装置、AEDなどの主力製品を生産しています。旧工場に比べ生産面積が倍増し、医療機器という精密機器を製造する環境としてグレードアップしました。建設計画の段階で、旧工場で日ごろ感じていた困りごとを課題として整理し、設計に反映することができたため社員の満足度も高いようです。
業務の効率化を進めるうえで欠かせない「システム化」にも社員が積極的に関わっています。通常、システムの設計には膨大な費用がかかりますが、その費用をかけて一気に業務改革を図るのではなく、業務アプリケーションサービスの範囲内で電子化ができるもの、自動化できるものから始める「草の根DX」という取り組みを行っています。このようなボトムアップ型でシステムを育てていく取り組みが、最終的に現場のニーズに沿ったシステムの構築につながるものとして期待しています。
―― これまでの取り組みで社員のモチベーションに変化はありましたか。
神田:内製化の推進により、製造ノウハウが社員のなかに蓄積され、技能資格(国家資格)などの専門技術を持つ社員も増えました。その結果、工場全体の技術力が上がっています。内製化が軌道に乗るまでは人材確保などで苦労する時期もありましたが、そのときに採用した若手が成長し、いまや重要な戦力となっています。
また、酸素濃縮装置のリユース規定の見直しが経営に貢献したことも、社員のモチベーションアップにつながっています。

白井事業所が世界に発信する「SHIROI QUALITY」
―― 「SHIROI QUALITY」における生産本部の取り組みとは?
神田:いまは製造業に関わらず効率化が求められる時代ですが、人の命にかかわる医療機器の場合、それだけを追い求めるわけにはいきません。手間暇をかけてでも品質の高いもの、現場の医療従事者が使いやすいもの、そして患者さんの利益になるものを作ること、そういう仕事をしていることにプライドを持てるようにすることが、管理者の役割だと思っています。内製化や「草の根DX」などのシステム化の取り組み、社員の意見を取り入れた新棟の存在はその大きな助けです。一方で、必要なところでは効率化を推し進めていきます。現在は、フロントローディングによる品質の向上、開発期間短縮の取り組みも進めています。
―― 治療機器の開発、製造を実現したことで起こった変化は?
神田:自社初となる国産AEDの開発、製造は、社員に大きな意識の変化をもたらしたと思います。AEDが不具合を発生させたときに何が起こるかを想像し、製品組立工程、検査工程に携わるすべての社員が身の引き締まる思いで日々の業務にあたっています。
治療機器の開発、製造では、これまで経験のない困難にぶつかることもありましたが、高い品質を保証するためにこれまで以上に意欲的に取り組めていると思いますし、結果が出たことで達成感を味わいました。モノづくりの現場では、このような体験の積み重ねが人を成長させるのだと思います。
白井事業所のモノづくり改革が目指すもの
―― 白井事業所における「モノづくり改革」の課題とは?
神田:「システム化」のような目に見えない改革、ソフト面の改革は、自動化や内製化といった目に見える改革、ハード面の改革に比べると少し時間をかけなければいけないと思っています。もちろん、既存のシステムにも課題があります。例えば、営業の担当者が注文を登録すると、部品の発注や製造現場への指示を自動で行うシステムがありますが、現場では常に部品の納期遅れや営業担当者から納期変更の依頼などが発生しています。社員たちは日程の調整や各部署との交渉などを本当によくやってくれていますが、「その仕事は何のために行っているのか」「目的を達成する手段としてこの方法がベストなのか」と一歩引いて考え、業務のスリム化に向けて何か工夫ができないかと常に考えながら仕事をすることで改革が進むのだと思います。

―― 今後の方向性、未来を見据えた取り組みとは?
神田:「ここまでやるか!フクダ電子」をスローガンに、いろいろなことにチャレンジしたいと思っています。いま考えているのは、医療機器メーカーとして従来ならあり得ないようなキーパーツの内製化、協働ロボットによる自動化拡大などです。また、AIを活用して当社に蓄積されている膨大な生産データを基にした未来予測も行っていきたいと考えています。
現在、不定期ではありますが、どのような情報を学習させてどんな未来を予測したいのかなど、AIの活用法について役職を超えて自由にディスカッションできる場を設けています。課題である管理部門のシステム化を進めていくうえでもAIの活用は不可欠です。
社員一人ひとりに目を向けたときに重要なのは、未来を担う若手が自分の将来のビジョンを描ける環境であることだと考えています。技能資格(国家資格)を取得した社員に対しては、その知識や技術を会社としてきちんと評価することがさらなるモチベーションにつながります。また、若手社員が有資格者の技術を近くで見たり、仕事に対する思いや経験を話してもらったりする「匠教室」も開催しています。日々の仕事の行き着く先に“匠の世界”があること、資格取得のチャレンジを支援して社員のモチベーション向上を促すことが、高品質な医療機器の開発・製造につながると信じています。
製造業は協力会社が数多く存在する、いわゆるピラミッド構造となっています。医療機器は成長分野ですから、高品質な製品を作っていくことで持続的成長が望め、ピラミッドに属する企業すべてが元気になります。新棟の稼働によって生産面積が2倍になり、生産の倍増も可能となりました。日本を盛り上げられる企業であり続けられるように、社員全員でモノづくり改革を成し遂げます。

神田豊晴(かんだ とよはる)
フクダ電子株式会社執行役員生産本部長
※本記事の情報は2026年1月現在のものです。
