むすび在宅クリニック京都
2025年10月開業
京都府京都市
- 内科
- 緩和ケア内科
記事更新日:2026.3
院長 清水 岳久 氏
開業した群馬県館林市の中心的な病院へ2015年に赴任しましたが、都市部と比べて重症患者さんが多いことに気づきました。急性心筋梗塞で心肺停止の状態で搬送される方や、発見時にはすでに末期がんである方などです。そしてその多くが、高血圧や糖尿病といった慢性疾患を未治療、あるいは十分に治療されないまま抱えていました。
こういう状況の一因として慢性疾患の継続的な管理や予防、早期対応を担う地域の診療所が絶対的に不足していることが背景にあるのではないかと感じました。調べてみると当医療圏は人口あたりの診療所医師数が全国平均を大きく下回っているだけでなく、開業医の高齢化による内科系医院の閉院も相次いでいました。
こうした現実を前に、「自分が地域医療を担う一員になるべきではないか」と考えるようになりました。
今後の開業には人口減少や保険財政の悪化などの外部要因にも十分に配慮すべきであると感じておりました。
日本の医療を取り巻く環境は決して楽観できるものではなく、このような時代においても持続可能な医院とは何かを真剣に考える必要があると感じました。また地域特有の医療事情も詳細に分析する必要もありました。
開業を決断する数年前にビジネススクールに入学し、経営を体系的に学びながら、「医療者として地域に何ができるのか」「医療と経営をどう両立させるのか」について自分なりの答えを見出すことができ、令和7年度からこの地域で医院を開業する決意をいたしました。
ビジネススクールの修士論文にて医院の構想を作成しましたが、これをもとにおおまかな理念とビジョンを言語化しました。その上で、「理想とする医院を実現するために何が必要か」を一つひとつ整理していきました。
建物のリフォームや導線設計、必要な医療機器の選定などについては、各分野の専門業者の方々と何度も相談や交渉を重ねました。
しかし、最も重要だと考えたのは人材です。理念とビジョンに共感し、同じ方向を向いて働いてくれる仲間がいなければ、医院は成り立ちません。そのため、自らスタッフ募集のパンフレットを作成し配布し、ひとりひとりと面談して粘り強く人材を探してきました。
開業準備の初期段階では、市内のどのエリアに医院を開設すべきかという点について、開業候補地逆引き調査や診療圏調査など客観的なデータや分析に基づいたご提案をいただき、大変参考になりました。立地は医院経営の根幹に関わる重要な要素ですので、早い段階で相談できたことは非常に心強かったです。
また、開業直前には各種行政手続きや届出について細やかにフォローしていただき、煩雑になりがちな手続きをスムーズに進めることができました。
医療機器の導入だけでなく、開業全体を見据えたサポートをしていただけた点に感謝しています。
今後も、開業後の運営面や機器の活用方法について継続的な情報提供やアドバイスをいただけると、さらに心強いと感じています。
市の花が「ヤマツツジ」であるように、つつじの花が館林市のシンボルです。市の中心部には世界的に有名な「つつじが岡公園」があり、春には樹齢800年を超えるヤマツツジの巨樹群をはじめ約1万株のツツジが咲き誇ります。
私はこの医院が持続していくためにもクリニック名に自分の名前を残すべきではないと思っていましたし、むしろ市民に愛されるつつじという言葉を入れたかったのです。
当院では、慢性疾患の管理はもちろんのこと、軽症から中等症までの急性疾患にも幅広く対応できる医院を目標としました。そのため、一般的なクリニックと比べて医療機器は多く、病院の外来に近い設備を備えています。ただし、それらの機器を少ないスタッフでも効率的に運用できるよう、動線や配置には十分配慮したレイアウトとしました。
また、高齢化が進む地域特性を踏まえ、診察後に院外の調剤薬局へ移動するご負担を減らせるよう、狭い院内でどうしたら院内薬局のスペースが確保できるかにもこだわりました。
私はこれまで循環器を専門としながらも、できる限り幅広く内科診療に携わってきたつもりです。しかし実際に地域で開業してみると、これまで診療経験が少なかった症状や疾患で受診される患者さんも少なくなく、その都度、判断や対応に悩む場面がありました。
病院勤務時代とは異なり、紹介や専門科への振り分けの前に、まず自分が最初の受け皿になるという責任の重さを改めて実感しました。必要に応じて文献を確認したり、専門の先生方に相談したりしながら、一つひとつ丁寧に対応してきました。
まず大切なのは、「なぜ自分は開業するのか」という問いに、できるだけ明確な答えを持つことだと思います。経済的な理由や働き方の自由だけが答えである場合、それが思ったほど得られない場合にくじけてしまうのではないでしょうか。
自分がどのような医療を地域に提供したいのかという理念をまず作りこむ、これがスタートです。
患者もだんだん増えてきましたのでスタッフを増員して診療を拡大するとともに、人間ドックなど新しい領域にも踏み込みたいと思っています。将来的には非常勤だけでなく常勤の医師の確保を目指し、診療科の拡大にも取り組みたいと考えています。
私自身は内科が専門ですので、小児科や婦人科など他診療科の医師を迎え入れることで、より総合的な地域医療を実現したいと思っています。そのため、現在の診療室2室体制では限界があることから、移転新築も視野に入れ、市と土地提供などについて協議を進めています。
さらに中長期的には、医療だけでなく介護分野への展開も視野に入れています。当地域では今後高齢者人口の増加が見込まれており、介護施設の需要も確実に高まります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設に加え、グループホームや介護付き有料老人ホームなど居住系サービスへの参入も検討したいです。