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AEDコラム
2025.06.24

AEDを女性に使うときの配慮した使い方や正しい救命手順を解説

近頃、SNS上で「女性に対するAED(自動体外式除細動器)の使用」をめぐる論争が注目を集めました。

「セクハラと訴えられるリスクがあるため避けたほうがいい」「女性の身体に少なからず触れることに抵抗がある」という意見もあり、実際に男女でのAED使用率には差があることも報告されています。

しかし、AEDは命を守るための重要な医療機器であり、使用をためらうことがかえって重大な結果を招く可能性もあります。今回は、女性へのAED装着にためらうべきではない理由から、女性に配慮したAEDの使用方法、さらに使用時の注意点まで紹介します。

1. 女性へのAED装着にためらうべきでない理由

セクハラに対する意識が高まりつつある近年、公共の場で倒れた女性に対してAEDを使用することをためらう男性は多くいます。AEDは素肌に直接電極パッド(除細動パッド)を貼る必要があるため、倒れた人が女性である場合「胸元を露出させなければならない」といった配慮から使用をためらってしまうケースは決して少なくありません。

しかし、本来AEDは心室細動や心室頻拍(無脈性心室頻拍)などの不整脈に、電気ショックを与えて正常なリズムに戻すための医療機器です。一刻を争う場面で人の命を救うためには、たとえ異性であってもAED装着をためらうべきではありません。

そこでまずは、女性へのAED装着にためらうべきでない理由を紹介します。

1-1. 救命が1分遅れると救命率は約10%低下する

心停止からの救命においては、初期対応のスピードが非常に重要です。

万が一心停止状態に陥ったとき、AEDによる除細動(電気ショック)をはじめとした心肺蘇生法が遅れると、救命率は男女関係なく1分ごとに約10%ずつ低下すると言われています。その一方で、京都大学などの研究グループが行った調査では、日本のAED使用率に男女差が生じていることが判明しました。

また、総務省が公表したデータによると、119番通報から救急車が現場に到着するまでの時間は全国平均で「約10分」となっています。

出典:総務省「令和6年版 救急・救助の現況」の公表

救急車到着までの間にAEDを使用しなければ、救命の可能性は急激に低下し、たとえ一命を取り留めたとしても重大な後遺症が残る可能性が高まります。

女性へのAED使用にためらっている数分は、「生死を分けることにつながる」と言っても過言ではありません。

1-2. 女性へのAED使用で訴えられた事例はない

近頃、「女性に対してAEDを使用した後に強制わいせつ罪の被害届を出された」というSNS上の投稿が拡散され、AED論争が巻き起こりました。

この投稿をした人物は、インターネットテレビサービスの報道番組にも出演して当時の状況を語っていましたが、のちにその内容が事実ではない、いわゆるデマであったことが判明しています。実際には、女性へのAED使用が原因で訴訟に発展した事例は確認されておらず、当該投稿内容についても誤情報であったとされています。

そもそもAEDの使用は緊急時の命を救うための行為です。厚生労働省も「救命現場に居合わせた非医療従事者の一般市民がAEDを使用しても、医師法違反にはならない」とした上で、「刑事・民事の責任についても、人命救助の観点から免責されるべき」「救命活動に積極的に取り組むべき」との見解を示しています。

一方、救命の現場に居合わせた一般市民が自動体外式除細動器を用いることは一般的に反復継続性が認められず、医師法違反にはならないものと考えられる。医師法違反の問題に限らず、刑事・民事の責任についても、人命救助の観点からやむを得ず行った場合には、関係法令の規定に照らし、免責されるべきであろう。 (中略) 当検討会が示す条件は「法違反に問われない」、「損害賠償責任を問われない」という、言わば消極的な安心感を与えるものにとどまらず、医学的知識を含め救命についての理解に立って、自信を持って救命に積極的に取り組むことを促すものであるべきである。

引用:厚生労働省「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」引用日2025/4/21

適切に行われた救命行為であれば、法律上の責任を問われる可能性は極めて低いと言えるでしょう。

2. 女性に配慮したAEDによる救命の手順

AEDによる救命処置が必要な人が女性である場合、「どこまで触れていいか分からない」「周囲の目が気になる」といった戸惑いを感じる男性も多くいるでしょう。しかし、「命を救うための対応」と「相手のプライバシーや尊厳の配慮」はいずれも両立が可能です。

ここからは、AEDを使用する際の基本的な救命手順と、相手が女性である場合に役立つ配慮の工夫を紹介します。

2-1. 安全な場所へ移動させる

目の前で倒れている人を見つけたら、まずは周囲の安全確認を行いましょう。車や自転車の往来がある場所など危険な状況であれば、まず救助者自身の安全を確保した上で、倒れている人を安全な場所へと移動させます。

このとき、できる限り倒れている人に負担をかけずスムーズに移動させることが大切です。1人での移動が難しい場合は、周囲の人にも助けを求めましょう。

2-2. 意識を確認した上で周囲に呼び掛ける

安全な場所へ移動できたら、倒れている人の肩を軽く叩いたり声をかけたりして、意識の有無を確認します。反応が見られなかったり明確な判断がつかなかったりした場合は、すぐに119番通報を行い救助を要請した後、周囲の人にAEDの手配を依頼しましょう。

倒れている人が女性の場合は、プライバシーに配慮して、周囲の協力を得ながら視線を遮るような体制をとるとよいでしょう。のちに行うAED使用時の視線を遮ることができ、プライバシーへの配慮につながります。

2-3. 胸骨圧迫をする

呼吸の有無を素早く(~10秒程度)確認し、正常な呼吸がなければ直ちに胸骨圧迫、いわゆる心臓マッサージを始めます。両手を重ねて、胸の真ん中(胸骨の下半分)あたりを、1分間に100~120回のテンポで「強く・速く・絶え間なく」圧迫しましょう。

圧迫する深さの目安は、小学生や成人で約5cm、未就学児の場合は胸の厚さの約1/3程度です。

2-4. AEDを素肌に貼り付ける

AEDが到着したら、フタを開けて電源を入れ、音声ガイダンスに従って操作します。

中に入っている電極パッドは素肌に貼る必要があるものの、服をすべて脱がす必要はありません。下着の肩ひもを少しずらして、右鎖骨の下と左脇腹あたりに貼るだけで十分です。

また、状況に応じて上から服やタオルをかけるのも配慮の1つですが、最優先すべきは一刻も早い救命措置となるため、できる範囲で配慮すれば差し支えありません。

心電図の解析が始まった後は、「離れてください」と声をかけ、ショック指示の音声が出たら誰も倒れている人に触れていないことを確認してボタンを押します(なお、自動でショック実行されるオートショックAEDの場合はボタンを押す必要はありません)。

2-5. 救急隊が到着するまで繰り返す

電気ショック後も意識や呼吸が戻らない場合は、電極パッドを貼ったまま胸骨圧迫を再開します。AEDは2分ごとに自動で心電図を再解析し、必要に応じて再び電気ショックを指示します。

救急隊が救命現場に到着するまでは、「電気ショック→胸骨圧迫→再解析」を繰り返しましょう。

3. 女性にAEDを使用するときの注意点

AEDを女性に使用するときは、相手のプライバシーや尊厳に配慮するほかにも、いくつか気を付けておきたいポイントがあります。いざというときに落ち着いて行動できるよう、ここから紹介する3つの注意点を事前におさえておきましょう。

3-1. 金属製のアクセサリーは外す

女性はネックレスをはじめとした金属製のアクセサリーを身につけているケースが多くあります。AEDの電極パッドが金属製のアクセサリーに触れていたり、2つの電極パッドの間にあったりすると、電気ショックの妨げとなるほか、やけどの原因となるおそれがあります。

そのため、電極パッドを貼る部分に近い金属製アクセサリーは、電気ショック前に外しておくと安全です。とはいえ、アクセサリーを外すのに時間がかかりそうなときは、無理に外さず、電気ショックの妨げにならないように動かします。

3-2. ブラジャーは外さなくても問題ない

前述の通り、AEDの電極パッドは右鎖骨の下と左脇腹あたりに貼るよう指示されます。

そのため、ブラジャーを脱がせる必要はなく、右の肩ひもを少しずらすだけで対応できることがほとんどです。金具付きのブラジャーであっても、電極パッドの接触面が素肌であれば特に問題はありません。

どうしても電極パッドを素肌に正しく貼れないという場合は外しても差し支えないものの、人目にさらされないようにするなどの配慮も忘れないでおきましょう。

3-3. 救命テントなどがあれば活用する

駅や商業施設では、救命処置の際に使用できる救命テントが設置されている場合があります。

救命テントとは、救命処置中の傷病者のプライバシーや尊厳を守るための簡易テントで、スムーズに設営可能です。テント側面には「救命中」「AED」の文字がプリントされており、周囲に救命活動中であることを知らせる役割も果たします。

救命テントを目隠しとして活用することで、より配慮の行き届いた対応につながります。ただし、救命テントを探すために処置を中断するのは本末転倒です。救命テントなどの備品は、あくまでも「近くにあってすぐ使える状況で活用するもの」と考えておきましょう。

まとめ

心停止からの救命はスピードが重要であり、電気ショックが遅れると男女関係なく1分ごとに約10%ずつ低下すると言われています。

救命処置後に訴えられる事例は過去に一度も確認されておらず、適切に行われた救命行為であれば法律上の責任を問われる可能性は極めて低いでしょう。

とはいえ、女性に対するAEDの使用は相手のプライバシーや尊厳に配慮しながら行動することも大切です。あらかじめ適切な配慮の仕方を知っておくことで、万が一自分が救助者となった場合でも、最善の対応を行えるようになるでしょう。

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