突然、目の前で子どもが倒れるなどの緊急時に適切な対応ができるかは、事前の知識と備えにかかっています。AED(自動体外式除細動器)は子どもにも使用でき、年齢や体格に合わせた正しい使い方を理解しておくことが大切です。
当記事では、子どもにAEDを使うときの基本的な手順や注意点について解説します。いざというときに命を守るために、ぜひご一読ください。
1. AEDを子どもにも使えるの?
AEDは子どもにも使用可能です。一般的に、0歳からの乳児を含むすべての年齢の子どもにも使用が可能とされています。また、使用する際は、AEDごとにモード設定や付属品(消耗品等)の変更が必要とされています。
未就学児(おおむね6歳未満)にはメーカーが定める設定での使用が推奨されています。例えば、未就学児モードの設定ができるAEDでは、小学生~大人モードと比べ出力を抑える設定であり、体格の小さな子どもにも使えるように設計されています。一方、小学生以上には小学生~大人モードでAEDを使用します。未就学児にも小学生~大人モードでAEDを使用することは可能ですが、未就学児モードがある場合はそちらを優先します。
他にもモード切替はなく、未就学児用パッドを装着して対応したり、付属品(未就学児キーを差し込む等)で設定変更するAEDもあります。
出典:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構「Q2 AED(自動体外式除細動器)を子供に使う時の留意点を教えてください。」
2. 子どもにAEDを使う方法・流れ
子どもが突然倒れたとき、正しい救命措置の流れを知っていれば、迅速かつ落ち着いた対応が可能になります。AEDの使い方も含め、基本的な手順を頭に入れておくことが、命を守る第一歩となります。以下では、子どもへのAED使用方法を具体的に解説します。
2-1. 周囲の安全確認
子どもが倒れている場面に遭遇した際、まず行うべきは周囲の安全確認です。救助者自身が危険な状況に巻き込まれてしまうと、救命活動が継続できなくなる可能性があります。交通事故現場や火災現場、水辺などでは二次被害のリスクがあるため特に注意が必要です。安全が確保できない場合は無理に近づかず、すぐに専門機関へ通報しましょう。
2-2. 反応の確認
周囲の安全が確認できたら、次に倒れている子どもに近づいて反応を確認します。肩を軽く叩きながら「大丈夫?」「聞こえますか?」などと声をかけてみてください。
このとき、子どもが目を開ける、うめき声を出す、身体を動かすなどの反応があるかを見ます。反応がない、または意識がもうろうとしている場合は、ただちに緊急事態として対応を開始する必要があります。判断に迷う反応の場合は、「反応なし」と判断しましょう。
2-3. 応援の要請
反応がなければ、すぐに助けを呼ぶことが重要です。「誰か助けてください!」と大声を出し、周囲の人に協力を依頼します。このとき、可能であれば特定の人を指名して行動をお願いすることが有効です。
「そこの白いシャツの方、119番通報をお願いします」「あなたはAEDを探して持ってきてください」といったように、指名されると人は動きやすくなります。一人で行動している場合は自分で119番に通報し、スピーカーモードなど(両手が使えるようにして)で指示を受けながら対応を進めましょう。
2-4. 呼吸の確認
次に確認すべきは呼吸の有無です。胸や腹の上下の動きを10秒以内で確認し、「普段通りの呼吸」をしているかを見ます。呼吸がまったくない、あるいはしゃくり上げるような不規則な呼吸(死戦期呼吸)の場合は、心肺停止の可能性が高いため、すぐに心肺蘇生法に移行する必要があります。
判断に迷う場合も、「呼吸がない」とみなして行動することが原則です。呼吸が確認できた場合でも安心せず、呼吸の状態を継続的に観察しながら子どもが意識を取り戻すか、救急隊が到着するまで見守ることが重要です。体を横向きにして安定した姿勢(回復体位)をとらせることで、吐物や舌による窒息を予防できます。
2-5. 胸骨圧迫・人工呼吸
呼吸が確認できなかった場合はすぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始します。小学生以上の子どもに対しては、両手または片手で胸の中央(胸骨の下半分)を、1分間に100~120回のテンポ、胸を押す深さは約5cmを目安に途切れなく圧迫します。
未就学児の場合は胸の厚さの1/3以上沈む程度に圧迫、乳児には2本の指で胸骨を押す方法が推奨されています。これは子どもの体格に合わせて圧力を調整する必要があるためです。
胸骨圧迫30回したら、気道確保をしつつ鼻をつまみ、口対口で2回息を吹き込み、人工呼吸をします。ただし、感染症リスクなどにより人工呼吸が難しい場合は、胸骨圧迫だけでも構いません。重要なのは、止めずに行動し続けることです。
2-6. AEDの使用
AEDが届いたらすぐに電源を入れ、音声ガイダンスに従って操作します。対象の年齢に合わせたパッドやモードを選びますが、詳細は、使用するAED機器の取扱説明書や本体の音声・表示ガイダンスに従って操作してください。
パッドは衣服をすばやく取り除き、素肌に直接貼付します。未就学児用のパッドやモードがある場合は切り替えます。用意がない(設定がない)場合は小学生~大人用パッドで代用することは可能です。体格の小さい子供にパッドを貼付する場合は、胸と背中に分けて貼る「前後貼り」など、取扱説明に従った貼付方法を選びましょう。
パッドを貼付するとAEDが自動で心電図を解析します。「ショックが必要です」と指示された場合は、まわりの人に「離れてください」と声をかけて誰も身体に触れていないことを確認して、ショックボタンを押します(なお、自動でショック実行されるオートショックAEDの場合はボタンを押す必要はありません)。
2-7. 胸骨圧迫の再開
AEDによるショックの後、すぐに胸骨圧迫を再開します。心拍が回復しているかどうかに関わらず、子どもが自発的に動き出すか、呼吸を再開するまで、または救急隊が到着するまで胸骨圧迫を続けることが大切です。
AEDは2分ごとに再解析を行い、ショックの必要性を再判断します。その都度、ガイダンスに従い、胸骨圧迫とAED操作を繰り返しながら救助活動を続けましょう。
3. 子どもにAEDを使うときの注意点
子どもにAEDを使用する際には、いくつかの注意点を事前に理解しておくことが大切です。年齢に適した設定の選択、使用中のパッド同士の接触回避、金属類の取り外しなど、以下に紹介するポイントを確認しておきましょう。
3-1. 年齢にあった使用方法
AEDは年齢に応じてモードやパッドの切替をしたり、付属品を装着したりします。さらには体格によって、貼付方法を変える必要があります。未就学児(おおむね6歳未満)には、「未就学児モード」を使用するのが基本です。一方、小学生以上には「小学生~大人モード」を使用します。
AEDによってはモード切替機能がなく、パッド切替や付属品装着で対応する場合があります。また、体格が小さい場合は身体の前後に貼るなど説明書に従った貼付位置を守りましょう。適切な使用方法に則り、AEDを使用してください。
3-2. 2枚のパッドが接触しないようにする
AEDのパッドは、2枚が重ならないように貼付する必要があります。もしパッド同士が触れてしまうと、電気ショックが心臓を通らず、パッド間でショートしてしまい、除細動の効果が得られません。
特に体格の小さな子どもでは、胸に2枚貼ると重なってしまう場合があります。重なりそう、重なるときは、1枚を胸に、もう1枚を背中に貼る前後貼りが推奨されます。前後貼りはパッド間の距離を確保しつつ心臓を挟むように電流を流すことができます。
3-3. 装着中は触れない
AEDの解析・ショックの動作中には、絶対に子どもに触れてはいけません。触れていると、AEDの電気ショックで感電する危険性や、AEDが心電図を正確に読み取れず、除細動が適切に行えなくなる可能性もあります。
AEDは、「離れてください」と音声で指示します。指示が出たら誰も子どもに接触していないことを必ず目視で確認し、状況を周囲に声かけすることが重要です。一瞬の油断が救命の妨げになりかねないため、細心の注意を払いましょう。
3-4. アクセサリーは外す
AEDを使用する際は、身体に装着されている金属製のアクセサリーを事前に外す必要があります。特にネックレスやピアスなどがパッドの貼付位置に近い場合、電気ショックの電流が金属に流れてしまい、やけどや感電のリスクが高まります。
近年は国際的な生活環境の中で、子どもでもピアスや装飾品を身につけているケースがあります。救助時は必ずパッドを貼る範囲をよく確認し、電流の妨げになりそうなものは外す、もしくはずらす対応を行いましょう。
まとめ
AEDは子どもにも使用できます。未就学児には「未就学児モード」、小学生以上には「小学生~大人モード」でAEDを使用します。
使用時はパッドの貼付位置やパッド同士の接触回避、金属アクセサリーの確認など、注意点を理解することも重要です。救命の現場では迅速かつ冷静な対応が何より大切なため、事前に知識を備えておくことで、迷わず適切な処置を行える可能性が高まります。日頃から救命手順を学んでおくことが、万が一の場面で命をつなぐ行動につながるでしょう。