2026年10月13日

【プロジェクトチームインタビュー】
未来の「こうなりたい」の実現に向けて
アンメットニーズの探索を通じて新たな社会価値を創造するメディカル・アフェアーズの挑戦

近年、製薬メーカーではメディカル・アフェアーズの導入が進み、エビデンスの創出や科学的な情報発信などを積極的に行っています。そんななか医療機器メーカーとして、多様化する医療のニーズに応えるべく、フクダ電子では2021年にアンメットニーズ探索に向けたメディカル・アフェアーズプロジェクト(以下、MA)を組織。検査や治療機器、医療クラウドサービスなどの高い開発力、実績を活かしつつ、まだ見ぬ未来の医療への貢献を目指して挑戦を続けています。

組織横断的に広い発想でアンメットニーズを探索する

―― フクダ電子のMA発足の経緯を教えてください。

桑山:もともとはフクダ電子(以下、当社)の検査データ管理システム「f’no」や在宅医療支援システム「f’Rens」などのクラウドサービスをはじめとした組織横断での医療DXプロジェクトがきっかけでした。議論を進める中、これからはAIやICT、ロボティクスなどの分野を中心に、幅広く自由な発想でアンメットニーズを探索する組織が必要だと考え、MAが発足しました。


桑山 フクダ電子株式会社 技術統括室
メディカル・アフェアーズプロジェクトリーダー

―― MAのメンバーはどのように集めたのでしょうか。また、MAのメンバーになったときの思いを教えてください。

桑山:自由な発想につながるよう社内の各部署、各分野から横断的に幅広く人材を選び参加してもらいました。2025~2026年にかけましては2期目のメンバーが加入しています。

井芹:私はMA発足時のメンバーの一人で、所属するイノベーション推進部門ではデータ解析などを行っています。日々の業務のなかでデータ利活用の重要性を感じていたものの、ひとつの部署ではどうしてもできることに限界があると感じていました。MAのように広く活動できる大きなプロジェクトに参加することで、仕事の幅も広がると思いましたし、そのなかで自分の力を発揮したいという気持ちでした。


井芹 フクダ電子株式会社 イノベーション推進部
(メディカル・アフェアーズ発足時メンバー)

井手:私は2025年10月からMAに参加しており、所属する開発部門では主に治療機器の製品開発に携わっています。従来の医療機器の開発は、「こういう製品を作ろう」という企画が先にあり、開発部門が製品化を進めていきます。それに対してMAは、これまでやってきた製品開発に至る手前の市場に隠れたニーズを探すのが仕事です。MAに参加することで、今後当社が展開する大きなプロジェクトにも携われるのではないかという期待もあり、メンバー入りの打診をされたときはうれしく思いました。ただ、アンメットニーズの探索は、製品開発とは真逆のアプローチであり、製品ありきではないという点で、当初は頭の切り替えが難しいと感じることもありました。


井手 フクダ電子株式会社 開発部門
メディカル・アフェアーズ

玉田:私は所属する技術統括室の中で倫理審査委員会の運営などの活動に参加していました。そのなかでMAの活動レポートを読んだり、話を聞いたりする機会が増え、私が行ってきた活動は、MA業務の一部に過ぎないことを知りました。社内でMAという組織はある程度周知されていましたが、実際にどのような活動を行っているのかを知らない社員が多いのではないかという思いから、情報発信の必要性を感じていました。そこからMAポータルサイトの立ち上げにも携わるなど、MAの活動が増えていき、2026年4月からMAに加入しました。


玉田 フクダ電子株式会社 技術統括室
メディカル・アフェアーズ

未来志向で活動するMAのミッションとゴール

―― MA具体的なミッション、ゴールについて教えてください。

桑山:MAは、アンメットニーズの探索を通じてデジタルによる新たな社会価値の創出を目指している組織です。そのなかで柱となるのが経営のシンクタンク機能と既存事業のリスク回避のための戦略立案機能です。前者を“攻め”とすれば、後者は“守り”といえるでしょう。経営のシンクタンク機能とは、今後市場でどのようなニーズが生まれ、その実現にはどのような製品やサービスが必要になるのかという提案を数多く行い、事業化につなげていくことです。既存事業のリスク回避のための戦略立案機能とは、サイバーセキュリティ対応の推進やイノベーション人材育成などがあげられます。倫理審査委員会の運営などもリスク回避の活動のひとつです。これらの活動を通してイノベーションに対する備えを行っています。(図)

図 MAによるデジタル・トランスフォーメーションを見据えた展開

対話と共創で未来に向けたアイデアを磨き上げる

―― MAはどのように活動しているのでしょうか。

桑山:MAではオンラインや対面でのミーティングを定期的に開催しています。ミーティングでは、最新情報の共有から始まり、各メンバーのアイデアをブラッシュアップするために議論を重ねたり、ワークショップを行ったり、社内向けの情報発信の企画・運営などを行っています。
MA活動をチームとして行ううえで大事なのは、自分を知り、お互いを知ることだと思っています。その取り組みのひとつとして自己・相互理解ツールを導入し、自分の強みや苦手なものを客観的に理解したうえで、メンバーお互いの資質を共有しています。自分を知ること、それを他のメンバーと共有することでカバーし合うことができるようになり、チーム力が向上していると感じます。このような自己・相互理解ツールはMAからの発信で、各部署での導入も始まっています。

井芹:私はMAが発足した初年度にMAビジョンの策定と動画制作に携わりました。MAビジョンは、「SGDs」「マーケット」「セキュリティ・コンプライアンス」「テクノロジー」の4つをテーマに、実現したい未来と当社に求められているものを各グループで議論し、まとめたものです。MAが発足した当初は「何をやるの?」と聞かれることも少なくありませんでしたが、MAビジョンの作成は、MAが目指す理想、目標の社内周知にもつながりました。

桑山:MAビジョンの動画は、当社の経営陣に私たちの取り組みやその必要性を理解していただいたり、社外のアカデミアやスタートアップ企業の方々にも知っていただくための重要なツールになったと思います。


MAミーティングの様子

―― MAアイデアはどのように作成しているのでしょうか。

桑山:MAアイデアは、変化を予測し、顧客の困り事から描いた理想が実現できたときの“新聞記事”の形式でまとめてブラッシュアップしていきます。経営のシンクタンク機能として、MAアイデアを増やしていくことが大切だと考えています。

玉田:年1回、MAアイデアを社内で展示するMAギャラリーというイベントも行っています。これは、日ごろの業務でDXやAIなどに触れる機会が少ない社員に対してもMA活動を広く認知してもらえる貴重な場になっています。MAギャラリーは現地の展示だけでなく、今年度からはMAのポータルサイトからの参加も可能とし、良いと思ったアイデアに投票してもらう参加型で行いました。

井手:私は、入社以来携わってきた治療分野での新たなソリューションをMAアイデアとしてまとめ、MAギャラリーにも展示しました。MAのミーティングでさまざまな意見をいただきながらアイデアをブラッシュアップしてきたものです。展示は匿名ですが、多くの社員に投票してもらうことができました。自分が提案したソリューションに賛同してもらえることは、MA活動においての大きなモチベーションになっています。

玉田:私はMAの正式メンバーになって間もないですが、MAギャラリーの運営などを通じて、メンバーの皆さんのアイデアや物の見方に触れ、多くの刺激を受けています。現在はMAのミーティングでMAアイデアの提案に向けたワークに参加しています。難しさも感じますが、これまで自分が携わってきた材料やセンサーなどの分野でもアンメットニーズがあるのではないかと感じており、医療DX以外の提案にも活かせるのではないかと考えています。

MAが育むイノベーションと未来の事業創出

―― MAの活動を通じて仕事への取り組み方などに変化はありましたか?

井芹:MAに参加する前は、開発担当者との関わりがほとんどでしたが、営業部門や他の事業領域の社員との交流が生まれ、多くの議論を交わしてきました。そのなかでさまざまなソリューションのアイデアが膨らんでいくこともあり、大変貴重な時間だったと感じます。現在、MAは”卒業”していますが、所属している部署を通じてMAと連携し新たなソリューションの創出活動を続けていく予定です。MAに参加したことでできたつながりは私のなかで非常に大きな財産になっていると思いますし、MAのワークを通じてイノベーションを推進するために必要な力をつけることができたと感じています。

井手:アンメットニーズの探索をしていくなかで、世の中の変化に対してその原因を想像したり、調査したりする力を養うことができていると感じています。所属している部署での製品開発のプロジェクトで設計や仕様を検討する際にも、製品の使われ方を想像するようになるなど、さまざまな視点で物事を捉えられるようになったと実感しています。

―― MAの活動から事業化への流れと今後の方向性について教えてください。

桑山:MAが提案したMAアイデアについては、別途プロジェクトを立ち上げ、具体的な検討を進めています。MAでは未来の変化を見据えたアンメットニーズを探索し、その成果を事業化検討プロジェクトにつなげることで、新たな事業創出を目指しています。

当社では2024年に隠れ心房細動のリスクを推定するAI心電計を上市していますが、この革新的な製品の研究開発にはMAメンバーも含まれており、MAとしても積極的に支援してきました。また、MAからの提案にてスタートアップ企業への出資も複数実現しました。アカデミアや企業とのコラボレーションは、数多くの人と会い、セミナーなどにも積極的に参加して情報を得ることから始まります。もちろん事業化につながる案件は限られますが、私たちはその可能性がある限り探索を続け、数多くの提案を続けていきたいと考えています。

※本記事の情報は2026年8月現在のものです。

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